6243H/6243 DCバイアス電流源は、インダクタの磁気飽和電流(Isat)と温度上昇電流(Irms)の分析を提供します。単体で40Aの電流を出力可能で、6632インピーダンスアナライザーまたは6355/6356 LCRメーターを組み合わせて使用する必要があります。周波数応答範囲は100Hz〜10MHzで、最大640A(16台)まで出力可能です。
DC バイアス電流ソース | |||||
型名 | 6243H/6243 | ||||
最大DCバイアス電流 |
640A (6243H) 320A (6243) |
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DCバイアス(ユニット) |
16 (6243H) Max.640A 8 (6243) Max.320A |
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電力消費 | 640W Max. | ||||
出力電流 (ユニット) | 40A | ||||
オプション LCRメーター/インピーダンスアナライザー | |||||
6632/6356/6355 |
オプション LCR メーター/インピーダンスアナライザー | 周波数応答 |
6632 | 100Hz-10MHz |
6356 | 100Hz-500kHz |
6355 | 100Hz-200kHz |
DCバイアス電流ソース | 6243H/6243 |
確度 (6632) |
0.000A-1.000A 1%+5mA |
1.001A-5.000A 2% | |
5.001A-20.000A 3% | |
DCR テスト | ● |
定電力出力 | ● |
電流スイッチ | ● |
システム
電源 | 電圧:88-264Vac | |
周波数:47-63Hz | ||
環境条件 | 温度:10℃-40℃ | |
湿度:20-90%RH | ||
寸法 |
356x145x644 mm (W*H*D)/6243 |
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質量 | 20 Kg (6243H/6243) | |
表示 | - | |
インターフェース | RS-232、Handler |
磁性部品にDCバイアス電流検出を追加する目的
未磁化のフェライト材料(鉄、ニッケルなど)を通電した銅線のコイル内に入れると、磁場が発生し、変圧器やインダクタの構造に応用されます。回路が動作しているとき、十分に大きな電流がインダクタを通過すると、鉄心の磁場は飽和に達し、この時、インダクタの特性は低下します。
磁気飽和がインダクタに与える影響
スイッチング電源に使用されるインダクタ素子の中で、特にパワーインダクタは欠かせないエネルギー貯蔵素子であり、フィルタリングとスイッチング回路が正常に動作するために重要です。パワーインダクタに使用される磁芯材料には、主に2種類あります。1つはフェライト、もう1つは鉄粉コアで、これらのパワーインダクタの磁気飽和特性は大きく異なります。
フェライトインダクタの特徴は、高い磁芯材料の透磁率を持っており、DC電流レベルや動作温度が一定の範囲に達すると、急激にインダクタンスが低下します。一旦フェライトが飽和状態に達すると、インダクタンスが急激に低下し、それにより発生する高いリップル電流が回路に永続的な損傷を与える可能性があります。
鉄粉コアインダクタは比較的安全な選択肢であり、広範囲のDC電流偏流と温度特性を持っているため、完全飽和状態になることは比較的少ないです。
MICROTEST 6225と6632の組み合わせは、フィルターインダクタの磁気飽和特性を検証するための、最適かつ高性能な高周波解析ツールです。
6225と6632は、DCバイアス電流源を搭載した高周波インピーダンスアナライザであり、高周波応答範囲は100Hz〜30MHz、最大出力電流は20Aに対応しています。
フィルタ回路において、磁気飽和とはインダクタが磁場に応答できる限界点を指します。磁場がさらに強くなると、インダクタはその変化に反応しなくなります。磁束密度は「Φ = L × I / N」で表され、一般的にインダクタンス(L)が大きいほど、飽和電流は小さくなる傾向があります。
電力網におけるEMI(電磁妨害)の課題は、フィルタ回路設計において常に重要な要素の一つです。
EMIノイズが電子機器全体に侵入すると、システム全体の動作不安定を引き起こす可能性があります。この問題を解決するためにEMIフィルタが用いられ、フィルタインダクタの性能がEMIフィルタモジュール全体の性能を左右します。
設計上、EMIフィルタモジュールとメイン回路を同一筐体内に配置するケースが多く、メイン回路が発熱することで、共通モードチョークに熱が伝導し、磁気飽和を引き起こすことがあります。
さらに温度上昇によって、マンガン・亜鉛系高透磁率コアの磁束密度が低下する現象も確認されています。加えて、オープンインダクタンス比や漏れインダクタンス値も、フィルタインダクタの性能に影響を与える重要な要素です。
MICROTESTのDCバイアス電流源テストシステムは、磁気飽和電流のカーブ特性を描画・解析する機能を提供します。
スキャンによる測定結果から、インダクタンスの低下率(%)を迅速に確認することが可能です。
インダクタメーカーは、磁気飽和電流(Isat)と定格温度上昇電流(Irms)の2つの主要な電流パラメータを定義しています。
回路設計において、インダクタに流れる最大瞬時電流は飽和電流(Isat)を超えてはならず、電流の実効値も温度上昇電流(Irms)を超過してはなりません。
一般的には、各定格に対して20〜30%のマージンを確保することが推奨されます。
インダクタの重要な仕様パラメータである定格電流には、磁気飽和電流(Isat)と温度上昇電流(Irms)が含まれます。
- 磁気飽和電流(Isat)
インダクタンスが20~30%低下した状態での電流値として定義されます。
- 温度上昇電流(Irms)
インダクタが動作状態にある際、自己発熱による温度上昇が40℃を超えない電流値として定義されます。
そのため、多くのインダクタメーカーは「温度上昇40℃」を基準にIrmsを設定しています。
MICROTESTのDCバイアス電流源テストシステムは、温度上昇電流のカーブ解析機能を提供します。
MICROTESTの温度上昇スキャン機能の測定方法
IDC値を使用して、インダクタの温度上昇がTr°Cに達した時の直流バイアスを測定します。
銅導体の温度係数は約3,930 ppmとされています。
Tr温度上昇時の抵抗値は次のように計算されます:
RDC_Tr= RDC(1+0.00393Tr)
熱抵抗が大きいほど、インダクタが負荷電流を流す際に発生する温度上昇が高くなります。
電動車の車載電子機器の安定性において、DC-DCコンバータの中でパワーインダクタはコア部品であるICに次ぐ重要な役割を担っています。適切なインダクタを選定することで、高効率な変換が可能となります。特に自動車の信頼性試験において、温度上昇の性能が成功の鍵となります。
例えば、車載オーディオシステムや車両のライトなどの電源管理システムにおいて、パワーインダクタには高飽和性、低損失、優れた温度特性が求められます。
温度上昇スキャンカーブを通じて、パワーインダクタが運転中に電流によって引き起こされる温度上昇の変化を観測することができ、エンジニアはこれを利用して定格電流の値を検証し、電流不足による過度な表面温度上昇を防ぎ、効率の低下を避けることができます。
MICROTESTのDCバイアステストシステムを使用して、お客様に最適なインダクタを分析し、磁気飽和の測定をより効率的に行うことができます。
機器を通じて、重要なパラメータ(Lsインダクタンス、Q品質係数、Zインピーダンス、DCR直流抵抗)を選択し、周波数信号を100kHz、AC電圧信号を1Vに設定します。
測定したインダクタンスは2.07μHで、DCバイアス200Aを加えることで、インダクタンスが1.02μHまで低下する様子を観察することができます。
アップグレードされた6632Sシリーズは、7種類の等価回路モデルを提供し、寄生パラメータが全体インピーダンスに与える影響を分析します。
実際の生産ラインでは、理想的なインダクタは存在しません。例えば、銅線で巻かれたインダクタでは、銅線上の寄生容量や線間で形成される容量、インダクタに並列に接続された等価インピーダンスなどが、インダクタの全体的な品質に予期しない影響を与える可能性があります。
6632Sシリーズのインピーダンスアナライザーには7種類の等価回路モデルが搭載されており、その中でA、B、Fの3つのモデルは、インダクタの三端子または四端子構成に適用され、等価回路分析を行うことができます。寄生パラメータであるR1、L1、C1を変更し、寄生パラメータが変化した後のインピーダンス曲線をシミュレートし、実際の部品とシミュレーションした曲線を比較することで、エンジニアが製品の検証をより効率的に進める手助けをします。
インダクタの等価回路分析を通じて、自己共振周波数(SRF)において、インダクタと寄生容量が並列共振回路を形成します。この時、並列交流抵抗(R)が支配的な要素となり、SRFはインダクタの最高インピーダンス点となります。SRF周波数を超えると、容量成分が支配的な要素に変わり、インダクタはインダクタンスを失います。
フィルタ回路設計のエンジニアにとっては、6632Sシリーズの等価回路モデルを利用して分析を行うことで、インピーダンスが十分に抵抗によって制御される場合、SRFを超えるインダクタを適切な減衰目標周波数として使用することができます。
エネルギー貯蔵型DC-DCコンバータ回路の設計エンジニアにとっては、破壊的な電流ピークや共振を避けるために、インダクタは自己共振周波数(SRF)を超える周波数で動作し始めないようにする必要があります。等価回路分析を用いて、寄生パラメータが部品の周波数特性に与える影響を確認することができます。
MICROTEST 直流バイアス電流源テストシステムには、透磁率係数の分析および測定機能が内蔵されています。
曲線スキャン分析機能を使用して、異なる周波数で透磁率の虚部(μr'')と実部(μr')の特性を選択し、インダクタが適切な周波数帯域で動作するための迅速な分析を行います。
機器には内蔵された透磁率係数(μr' / μr'')の測定機能があり、異なる磁性材料の透磁特性を迅速に分析することができます。
鉄芯とフェライト鉄芯は飽和特性において大きな違いがあります。その重要なパラメータは透磁率(導磁特性)です。
フェライト鉄芯の透磁率は急速に低下するのに対し、鉄粉コアは緩やかに低下します。
一般的に高周波インダクタでよく使用されるのはフェライトコアです。
フェライトコアは、ニッケル亜鉛(NiZn)またはマンガン亜鉛(MnZn)を含むフェライト化合物で、矯頑磁力(コアシビティ)が低いソフトマグネット材料に分類されます。
マンガン亜鉛およびニッケル亜鉛フェライトは、相対透磁率(μr)がそれぞれ約1500~15000および100~1000と高く、優れた導磁特性を持っています。このため、一定の体積で高いインダクタンスが得られます。しかし、欠点としては、耐飽和電流が低く、フェライトコアが飽和すると透磁率が急激に低下する点が挙げられます。
粉末鉄心はソフトマグネット型の鉄磁性材料です。
粉末鉄心は、異なる素材の鉄粉合金または純鉄粉から作られ、配合には粒子サイズの異なる非導磁材料が含まれているため、飽和特性のカーブは比較的緩やかに表現されます。粉末鉄心は主にトロイダル(環状)形状で、よく見られる粉末鉄心には、鉄シリコンアルミ合金(Sendust)、鉄ニッケルモリブデン合金(MPP)、鉄ニッケル合金(High Flux)、および鉄粉コア(Iron Powder)などがあります。
MPPは「モリペルマロイ粉末(Molypermalloy powder)」の略で、相対透磁率は約14~500、飽和磁束密度は約7500ガウス(Gauss)です。これは鉄酸化物の飽和磁束密度(約4000~5000ガウス)よりも大幅に高いです。
MPPは粉末鉄心の中で最小の鉄損を持ち、温度安定性が最も優れています。外部直流電流が飽和電流ISATに達すると、インダクタンスは緩やかに低下し、急激な減衰は起こりません。この特性により、通常は電源コンバータのパワーインダクタやEMIフィルタに使用されます。
鉄シリコンアルミ合金鉄心は、鉄、シリコン、およびアルミニウムを組み合わせた合金鉄心で、相対透磁率は約26~125です。鉄損は鉄粉コアとMPPおよび鉄ニッケル合金の間に位置します。飽和磁束密度はMPPよりも高く、約10,500ガウスです。
温度安定性と飽和電流特性はMPPおよび鉄ニッケル合金に比べて若干劣りますが、鉄粉コアやフェライト鉄心よりは優れています。主にEMIフィルタ、力率補正(PFC)回路、及びスイッチング電源コンバータのパワーインダクタに広く使用されます。
鉄ニッケル合金鉄心は、鉄とニッケルを組み合わせたもので、相対透磁率は約14~200です。鉄損と温度安定性は、MPPおよび鉄シリコンアルミ合金の間に位置します。
鉄ニッケル合金鉄心は飽和磁束密度が最も高く、約15,000ガウスです。また、直流バイアス電流にも高い耐性を持ち、DCバイアス特性に優れています。主に力率補正(PFC)、エネルギー貯蔵インダクタ、フィルタインダクタ、高周波変圧器のバックコンバータなどに使用されます。
鉄粉コアは、非常に小さく、お互いに絶縁された高純度の鉄粉粒子から作られており、製造過程で分散したギャップを持つ特性を持っています。鉄粉コアの相対透磁率は約10~75で、約15,000ガウスの高飽和磁束密度を持ちます。
粉末鉄心の中で、鉄粉コアは最も高い鉄損を持っていますが、その分コストは最も低いです。
多段階テスト機能(List mode)を選択すると、次のように測定を設定できます。
第一ステップでは、感応コイルのインダクタンスを測定し、第二ステップではDCバイアス電流源を加えて、DCバイアス後のインダクタンスを測定します。
標準付属品
電源コード | |
DIP テストフィクスチャ-DC バイアス電流 (F6210) | ![]() |
オプション付属品
PCリンクソフトウェア | |
SMD テストフィクスチャ-DC バイアス電流 (F6220) | ![]() |
BNC+BNC ケーブル |